【最新版】ポスドク問題。博士卒の年収と就職状況をデータから詳しく説明します。

ポスドク問題
運営者りつ

こんにちは。運営者の
りつ(@HAcademianote)です。

ポスドク問題とは

多くの博士卒が任期のない職(パーマネント職 or テニュア職)につけず、長らく雇用形態や給与の不安定なポスドクとなっている現状のこと

大学や研究者界隈ではこんな話、よく聞きますよね。

博士まで進むと就職が厳しくなる

ポスドクの給料は安いし、研究者の将来って不安定

データを集めて検証すると実際のところはどうでしょうか?

この記事では可能な限り最新の統計データを紹介しながら、博士卒の就職状況、給与について掘り下げていきます。

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ポスドク問題とは?

ポスドク問題
そもそもポスドクとは…

「いわゆる博士号(ドクター)取得後に任期制の職に就いている研究者や、そのポスト自体」を指す

現在、ポスドクは1.5万人以上いるとされます。

Dr.はたけ

博士卒で安定した職に就けない研究者がたくさんいるんですね

ポスドクが増えた原因は

  • この半世紀前で博士の数がかなり増えた
  • 博士の数に対して大学教員ポストが少ない
  • 博士取得後に企業に就職する文化が浸透していない

そもそもポスドクとは、不足する大学教員ポストを補うための受け皿として誕生しました。ポスドク=「研修期間」としてアカデミアポジションを得るまでのキャリアパスとして位置づけ、研究者数自体を増やす狙いがありました。

しかしながら、不安定なポスドクからなかなか抜け出せない若者が多いことや待遇が良くないことを「ポスドク問題」と呼んでいます。

現在ではこうしたポスドク問題によって「科学者の魅力が低下」し、能力の高い学生が科学者を目指さなくなっているといわれています。



博士の厳しい就職状況

博士の就職

文部科学省が行った令和2年度の博士課程の卒業後の調査ではこのようになっています。

  • 博士課程修了者15522名
  • そのうち75.8%が就職
  • 就職者のうち任期のない常用雇用は69.3%(全体の52.6%)

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博士課程修了者の就職状況
参照:文部科学省 令和2年度 学校基本調査
Canva Proを用いて運営者が作成  

それに対して修士卒では、任期のない常用雇用者は74.1%(出典:文部科学省とあります。

Dr.はたけ

博士が52.5%
修士が74.1%
数字だけみると博士って厳しいと思わされる


どうして安定した就職が難しいか?

  • 理由①:競争の激しい大学教員ポスト
  • 理由②:任期付きの大学教員が増加
  • 理由③:企業への就職が浸透していない

理由①:競争の激しい大学教員ポスト

競争の激しい大学教員ポスト

博士を取得して研究者を目指すならば、大学教員や研究所などのポストを探すことになります。

しかし、その大学教員のポストはとても競争率が高いのです。

その理由は、博士の数に対してポストの数が少ないから。

博士の数は半世紀で大幅に増加

博士取得者数は、1980年代と比較して2倍以上に増えています。

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参照:文部科学省 科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2020」
Canva Proを用いて運営者が作成。



博士がこのように増えた時代背景については以下の記事で詳しく説明しています。


博士の数に対して教員ポストの受け皿は増えていない

しかしながら、急増した博士取得者と比して、若手の大学教員採用数は増えていません。

図:生物科学学会連合 ポスドク問題検討委員会(2015)より転載
画像:Canva Proを用いて運営者が作成


このように教員ポストが少ないことから、1名の募集に対して50名や100名もの応募があることも多いようです。

Dr.はたけ

ものすごい倍率!


こうして、大学教員ポストを手にするまでの研究者の一時的な受け皿としてポスドクの数は増えていったわけです。


その結果、新卒者で大学教員になれる人はわずか

以下は文部科学省が大学教員に採用された方の採用前の状況を調査した結果です。

注目していただきたいのは、赤色。

採用前に「学部新規卒業者・大学院修了者」だった人は
・平成21年度で10.7%(1185名)
・平成30年度で8.7% (1003名)

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参照:文部科学省 令和元年度学校教員統計調査
Canva Proを用いて運営者が作成


Dr.はたけ

新卒で大学教員になっている人はほどんどいない…

博士卒業後に任期のない常勤職についた割合は50%強」という上述の結果に繋がっています。


理由②:任期付きの大学教員が増加

任期付きポストの増加

そんな競争率の高い大学教員ですが、現在では「任期付き」であることが増えています。

特に「任期付き」が増えている集団は
・30~40歳代
・助教、特任助教


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大学における任期付き・任期なしの教員数の推移
H27年.文部科学省 科学技術・学術政策研究所「大学教員の雇用状況に関する調査」より運営者が作成


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図:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 大学教員の雇用状況に関する調査より引用し、運営者が一部加工
画像:Canva Proを用いて運営者が作成


激戦を勝ち抜いて大学教員になっても、任期があればまた次のポストを探さなければいけません。

Dr.はたけ

ポスドク→助教→ポスドクということだってありうる

雇い止めの問題

任期付きで雇われている研究者(大学教員やポスドク等)ですが、2023年以降は、雇用10年目を迎える研究者の多くが雇い止めされる懸念が浮上しています。

その発端は、2013年に成立した「無期転換ルール」という「雇用10年を超える場合は任期のない職への転換を申請できる」とした政策です。

その無期転換を避けるために、大学や機関側は雇用10年目を前に雇い止めをするのではと予測されています。

つまり、任期を更新しながら長期的に同一機関で働くことが難しくなってしまったということです。

雇い止めの問題については以下の記事で詳しく解説しています。


任期制の職の問題点

このような不安定な雇用形態はじわじわと研究者の精神を蝕んでいきます。

さらに、任期があるという不安定な状況では、次の就活に必要な業績をかせぐために短期的な結果の出やすい研究が多くなるという問題点も指摘されています。

人類の大発見に繋がるような壮大な研究に着手し辛いということです。

このような現状を打破するために、政府も色々と政策を打ち出しており、その一例がテニュアトラック制の導入です。

テニュアトラック制とは

若手研究者に完全に独立した研究環境と資金を与えて、一定期間内で期待する成果を上げれば、任期のない教員(テニュア職)に採用するという制度です



理由③:企業への就職が浸透していない

企業への就職が浸透していない

日本では博士課程から企業への就職はまだまだ一般的ではなく、「博士は大学の教員になる」という考えが根強いです。

さらに、これまでは企業側も積極的に博士を採用しようとはしてこなかったようです。

諸外国と比べてみても、企業の研究者における博士の割合は日本は非常に低いですね。

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企業の研究者に占める博士号取得者の割合
参照:文部科学省 中央教育審議会大学分科会 大学院部会(第90回)H30.12.5 参考資料3
Canva Proを用いて運営者が作成


2012年博士課程修了者の1年半後の状況を調査した結果では…

  • 博士卒後は6割がアカデミア、3割が非アカデミアに就職
  • アカデミアでは6割が任期付きの職、非アカデミアでは 約9割が正社員・正職員での雇用

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博士修了者の一年半後の就職状況
科学技術・学術政策研究所「「博士人材追跡調査」第1次報告書ー2012年度博士課程修了者コホート」, NISTEP REPORT No. 165, 2015よりCanva Proを用いて運営者が作成


企業へ就職するときの主要なメリットは正規職員であることの経済的安定と精神的安定ですね。

最近では、企業の求人にも変化があり、大企業の研究職で博士の求人が増えているようです。

Dr.はたけ

10年前のデータなので、今はもっと非アカデミアへ進む博士が増えている…かも?情報アップデート出来次第更新しますm(_ _)m

進路に迷いがある方は、などの大学院生や研究者専門の就活サイトに登録してみることをおすすめします。

博士課程での活動や成果を高く評価し、求めてくれる企業が見つかる可能性もあり、人生の選択肢を広げることになります。

メリット以外にもちろんデメリットもあるので以下を参考にしてみてくださいね。



ポスドクの年収は低いのか?

ポスドクになった時の待遇や働き方はどうでしょうか。

ポスドクは大学や研究室によって多様な形態があり一概に表すことは難しいですが、任期付きの大学教員も含めて大まかに紹介します。

年収等の表記についての注意

タイトルでは一般的にイメージしやすいよう「年収」で表していますが、文章中では引用元を尊重して「月給」と「年収」表記が混在しています。ご了承下さい。

いわゆるポスドク:博士研究員
(年収300~600万)

博士研究員とは、いわゆるポスドクと言われ、研究室の個別の研究費(科研費など)やあるプロジェクトの一員として任期を設けた上で雇用されています。

博士研究員には様々な形態があります。

ざっと現時点での公募を調べてみると、任期は1~10年までばらばらで、給与は年俸制の場合も時給の場合もあります。

年俸制で25~50万円/月

時給制で1500~2500円/時間

年収はピンキリといっていいでしょう。

JREC-INで「職種:研究員・ポスドク相当」にチェックを入れて、あなたの研究分野などのキーワードで検索すると相場がわかります。

公募されるポスドクとして有名なものを一例として挙げます。

理化学研究所 基礎科学特別研究員の例

待遇年俸制で487000/月(社会保険料込み)
通勤手当(上限55000円/月)、住宅手当(家賃の一部)、赴任旅費(当研究所規定に基づく)の支給あり
任期3年
その他外部研究費(科学研究費補助金等)の申請資格あり
Dr.はたけ

こちらはポスドクの中では高給だと言われています。
一般的ではないのでご注意。


ポスドクの間は雇用主である教授などと相談しながら研究を遂行し、業績を積みながら任期のないポストにアプローチを続けていくことになります。

日本学術振興会 特別研究員PD
(年収約450万)

特別研究員制度とは、「わが国の優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図る制度」(引用:日本学術振興会ホームページとして国が設けています。

要は、優秀な研究者に生活費と研究費を支援してくれる国の制度です。

博士課程修了後5年間以内が応募条件であり、採択された場合には特別研究員として3年間活動できます。

  • 生活費:36.2万円/月を研究者に直接支給
  • 研究費:150万円/年を所属する大学を介して研究者に支給

(※雇用ではないので、国民年金や国民保険には自分で入る必要があります。)

採用人数は文系理系あわせておよそ350名と非常に少なく、革新的な研究内容かつ十分な業績のある研究者しか通りません。


任期付きの大学教員(ここでは助教)
(年収約600~700万)

大学教員の中で最も若手であるポジションは「助教」ですが、助教は任期付きの募集が多いです。

「任期付き助教」は主に以下の2つに分けられます(テニュアトラック助教を除く)

  • 助教(大学基盤運営費での雇用)
  • 特任助教(外部研究費での雇用)

助教にも色々と種類があり雇用形態や働き方が異なります。詳しく知りたい方は【かんたん解説】テニュアトラック、特任、特命助教の違いを比較解説!も読んでみてください。

文部科学省の調査では「所属する機関からの」平均月額給料は35.1万円とあります。

その数字から以下の項目なども例で加えて概算してみます。

  • 住宅補助などの諸手当2万/月
  • 賞与3か月分/年
  • 副収入100万/年

平均年収600~700万

大学区分による違いは以下の図を参考にしてみてください。

助教の給料
令和元年度「学校教員統計調査 給料月額別 職名別 本務教員数」よりCanva Proを用いて運営者が作成


私立の方が収入にばらつきがありますが、任期付きであっても大学教員であれば給与水準は低くありません。

その他の大学教員の具体的な年収はこちらの記事をご参照ください。

いずれにせよ、給与は少なくなくても、任期が終了するまでに次の行き先を見つける必要のある不安定な状況には変わりありません。

さらには、研究の他に学生の講義などの教育も仕事の内に入ります。

Dr.はたけ

とにかく激務!(運営者経験済み)


ポスドク問題をどう考えるか?

ポスドク問題の捉え方

ポスドクは研究者の研修期間?

ポスドクは研究者の研修期間として、誰もが通る道と位置づけられつつあります。

博士号取得者が急増した今では、博士の能力も「ピンキリ」といえます。(博士号の授与基準が大学によってもバラバラで、博士号が取りやすい大学・学部などが存在します)

ポスドク期間で確実に成果を挙げれたポスドクだけが任期のない大学教員ポストを手にできるという流れは、ある意味自然なのでしょうか?

ポスドクがいないと研究室が回らないという側面

「研究室はポスドクがいないと回らない」というくらい、研究室運営においてポスドクの存在は有難いものです。

最近の大学教員は教育や大学雑務にかかる時間が多すぎて、研究活動に注力できない状況におかれていることもあります。(学生の実習期間などはある時期に集中的に行われたりするのでその間は研究をストップすることも多いですね)

こういった状況下では、研究の実務や大学院生の研究指導などで教員の代わりにポスドクが大きな役割を担うケースも珍しくありません。

科学の発展にポスドクの下支えがあることを忘れてはいけませんね。

Dr.はたけ

アメリカではポスドクの働きに感謝する「ポスドクデー」があるそうですね。


研究者に向いてないと感じている人へ

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もし、研究者に向いていない場合は、別の領域であなたの能力を発揮した方がよほど効率的です。

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まとめ

最後まで読んでいただいたあなたは、ポスドクの状況をどのように捉えられましたか?

弱肉強食であって当然でしょうと思う方、博士にまでなって厳しいなと思う方、さまざまだとは思いますが、これから研究者を目指す方には心に留めておいて頂きたいと思います。

運営者りつ

最後までお読みいただきありがとうございました。記事更新のお知らせはTwitterで行っています。良かったらフォローしてくださいね(@HAcademianote




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