こんにちは。運営者のあかのん(@HAcademianote)です。
博士課程まで進み、研究者を目指す上で、アカデミア(大学)と企業研究者のどちらの進路を選ぶかで悩む人は多くいます。
どちらにもメリット・デメリットが存在します。
例えばアカデミアにはこんな不満ががあります。
アカデミアではなかなか任期のないポストに就けない…経済的に不安
研究以外の仕事が多すぎて研究に専念できない。
かわって、企業研究者に例えばこのような不満があります。
自分が思ったような研究ができないし、論文も出せない
研究職以外へ異動になった
このようにアカデミアと企業研究者では環境がずいぶん異なります。
今回は、博士を修了したあとの進路選びに役立つ内容を「企業研究者になるメリットとデメリット」というかたちでまとめてご紹介します。
\この記事をおすすめする人/
- 博士課程に在学中の学生
- ポスドクなど任期制のポストに就いている若手研究者
こちらの書籍も参考になります。
博士が企業研究者を選ぶメリット
- 経済的安定が得られる
- 研究に集中しやすい環境
- 研究費獲得に奔走しなくていい
- 研究のエンドポイントが定まりやすい
- チーム研究による孤独感の軽減
- プライベート時間が作りやすい
メリット①:経済的安定が得られる
経済的な安定は企業研究者のメリットといえます。
なぜなら、現在ではアカデミアでは若手研究者はなかなか任期のないポストに就けないからです。
アカデミアに残るか、民間企業に就職するかでかなり雇用形態が違ってきます。
「アカデミア 就職組」で任期のないポストに就けたのは約4割しかいない
\画像クリックで拡大/
アカデミアの低さ…
アカデミアの雇用の不安定さは以下の記事でも紹介しています。
■ポスドク問題(博士の就職状況、年収)
一方で、企業へ就職した博士は9割が正規雇用です。
結婚や出産などのライフイベントの多い時期に経済的安定を得られるメリットは絶大です。
メリット②:研究に集中しやすい環境
アカデミアで働く研究者には、学生の教育という、研究に匹敵する重大な仕事があります。
これは学科や専攻によって大きく異なりますが、週数コマの講義を担当することになります。
これにより、アカデミアの研究者の中には、研究より教育の比重が大きくなっている(しまっている)先生方が沢山みられます。
その点では企業では研究に専念できる環境にあるといえます。
メリット③:研究費獲得に奔走しなくていい
こちらもかなり大きいメリットです。
企業では社内審査さえ通れば研究費を頂くことができます。
一方でアカデミアだと、科研費をはじめやその他のグラント(競争的資金)を獲得するための申請書作成に膨大な時間を費やすことは有名です。
メリット④:研究のエンドポイントが定まりやすい
アカデミアにおける基礎研究は未知のものに対する絶え間ない探求を続けることであり、研究のエンドポイントは定まりにくい傾向があります。
アカデミアの研究は長期化する傾向にあります
研究のこの側面を受け入れられずに、研究から離脱する人が一定数みられます。
これは性格的な向き不向きであるので、勉学的に優秀な人材であろうと関係ありません。
一方、企業研究者として働く大きなメリットは、エンドポイントが定まりやすい点です。
あくまで実用化・商品化という目標に向けて、チームで一気に研究を進めます。
企業研究者の目的は、一刻も早く研究を実用化・商品化することで社会貢献し、自社の収益に繋げることですからね
研究成果が実用化される達成感を短期サイクルで得られやすいです。
研究の実用化を肌で感じられることは、研究者冥利に尽きますよね
メリット⑤:チーム研究による孤独感の軽減
企業研究者の場合、ある目的に対してチームで研究を進めます。
このチーム研究のスタイルには向き不向きもありますが、精神的に安定感を得られる人もいます。
アカデミアの研究者はいわば個人事業主
研究室を持つPIになったら会社経営者
アカデミアでは、研究、仲間作り、研究室の立ち上げ、資金調達、啓蒙活動など、全てにおいて個人の力が大きいです。
うまくいかないときには孤独感、無力感、劣等感など…ネガティブ思考になりやすいです。
自らガツガツと進めていくタイプでない方は企業研究者の方が向いているかもしれません。
メリット⑥:プライベート時間が作りやすい
企業研究者はプライベート時間を確保しやすいというメリットもあります。
民間企業では、労働基準法があり、会社としての世間の評価があり、残業時間などは厳しくチェックされます。
しかし、アカデミアで働く研究者は、より多くの時間を研究や論文執筆に費やすほど業績に直結するという観点から、プライベートを削り、寝る時間を削り、、、と無理をしがちです。
博士卒が企業研究者を選ぶデメリット
- 経済的安定が得研究の優先事項が商品化や特許になる
- 研究内容は企業の方針に従う
- 研究職から別の部署に異動になる場合がある
- (番外編)企業研究者を目指すにあたり、研究と就活の両立が難しくなる
デメリット①:研究の優先事項が商品化や特許になる
アカデミアでの研究は「基礎研究」がメインです。
一方、企業の研究職では、研究より開発に重きが置かれ、基礎研究で得られた新規発見を商品やサービス化するための「開発」がメインになることが多いです。
優先順位は、商品・サービス化 > 特許 > 論文
長期戦を見据えてじっくり取り組む基礎研究とは反対に、短期間で成果を挙げていくスタイルになります。
メリット③「研究のエンドポイントが定まりやすい」の裏返しでもあります。
じっくりと基礎研究に従事したい方には向かないかもしれません。
企業の研究スピードが早く感じるのは、少なからず短期間で成果を挙げなければいけない事に起因していて1つのテーマに腰を据え取り組むのは難しいし、営利企業の性質上、事業への貢献度が重視されるわけだが基礎研究はそこが見えづらいので「事業化も出来る研究者」にならないと生き残れない気がしてる
— みのん (@min0nmin0n) September 26, 2021
大きな企業研究施設であれば、基礎研究に取り組んでいる場合もあります。
デメリット②:研究内容は企業の方針に従う
もし企業の研究職へ就職が決まったとして、はじめはどの部に配属になるか分かりません。
その研究にあなたがやりがいを感じるかはわかりません。
製薬業界に勤めたある仲間は、入社時に梱包用の乾燥材を改良する部署に配属され、少々残念がっていました。
お菓子にも入っている「これは食べられません」と書かれたものですね
ただ、能力が評価されてチームのブレインとして成長するにつれて、状況は変わります。
30~40代になってくると、自身のアイデアをプレゼンし、社内の承認が下りれば自分の研究を実現することもできます。
デメリット③:研究職から別の部署に異動になる場合がある
研究部門で採用されたのに、そんなことあるの?
こちらは深刻なデメリットです。
私の知人でも、また別の製薬会社の研究部門に就職した博士卒が、MR職(営業)に異動になりました。
企業にとって研究部門とは「先行投資」ですから、経営が悪化すれば縮小されやすくなります。
その際に研究職が他部門に異動になるケースはないとはいえません。
まとめ
博士が民間企業に就職するメリットとデメリットをまとめました。
博士課程のあとの進路は誰もが悩む道です。
どちらの選択肢も残しながら、自分の向き不向きを考えれると良いですね。
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