企業研究者になる(脱アカデミアする)メリットとデメリットを解説。

あかのん

こんにちは。当サイトの運営者で、研究者歴10年以上のあかのん(@HAcademianote)です。

博士課程まで進み、研究者を目指す上で、アカデミア(大学)と企業研究者のどちらの進路を選ぶかで悩む人は多くいます。

どちらにもメリット・デメリットが存在します。

アカデミアにはこんな不満ががあります。

アカデミアではなかなか任期のないポストに就けない…経済的に不安

研究以外の仕事が多すぎて研究に専念できない。

かわって、企業研究者にはこのような不満があります。

自分が思ったような研究ができないし、論文も出せない

研究職以外へ異動になった

このようにアカデミアと企業研究者では環境がずいぶん異なります。

今回は、博士を修了したあとの進路選びに役立つ内容を「企業研究者になるメリットとデメリット」というかたちでまとめてご紹介します。

\この記事をおすすめする人/

  • 博士課程に在学中の学生
  • ポスドクなど任期制のポストに就いている若手研究者

こちらの書籍も参考になります。

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博士が企業研究者を選ぶメリット

メリット
  • 経済的安定が得られる
  • 研究に集中しやすい環境
  • 研究費獲得に奔走しなくていい
  • 研究のエンドポイントが定まりやすい
  • チーム研究による孤独感の軽減
  • プライベート時間が作りやすい

メリット①:経済的安定が得られる

企業研究者になるメリット①経済的安定

経済的な安定は企業研究者の最大のメリットです。

なぜなら、現在ではアカデミアでは若手研究者はなかなか任期のないポストに就けないからです。

以下に少し古いですが、博士修了後の就職状況について調査したデータをご紹介します。

「アカデミア就職組」では博士修了後1年半後に6割が任期ありのポジション

\画像クリックで拡大/

出典:科学技術・学術政策研究所「博士人材追跡調査」第1次報告書ー2012年度博士課程修了者コホート」, NISTEP REPORT No. 165, 2015より運営者が作成
あかのん

アカデミアでの就職の難しさ…

アカデミアの雇用の不安定さは以下の記事でも紹介しています。

研究者の任期と雇い止め


ポスドク問題(博士の就職状況、年収)

一方で、企業へ就職した博士は9割が正規雇用です。

結婚や出産などのライフイベントの多い時期に経済的安定を得られるメリットは絶大です。

メリット②:研究に集中しやすい環境

アカデミアで働く研究者には、教育活動という研究に匹敵する重大な仕事があり、週に数コマの講義を担当することになります。

これにより、アカデミアの研究者では研究に割く時間は企業研究者より限られてしまいます。

企業研究者は研究に専念できる環境にあるというメリットがあります。

アカデミアでも、助教やテニュアトラック教員のように、『講義はない』もしくは『かなり少なく』設定されている場合もあります。

メリット③:研究費獲得に奔走しなくていい

企業では社内審査さえ通れば研究費を頂くことができます。

一方でアカデミアだと、科研費をはじめやその他のグラント(競争的資金)を獲得するための申請書作成に膨大な時間を費やすことは有名です。

メリット④:研究のエンドポイントが定まりやすい

企業研究者として働く大きなメリットは、エンドポイントが定まりやすい点です。

あくまで実用化・商品化という目標に向けて、チームで一気に研究を進めます。

あかのん

企業研究者の目的は、一刻も早く研究を実用化・商品化することで社会貢献し、自社の収益に繋げることですからね

研究成果が実用化される達成感を短期サイクルで得られやすいです。

あかのん

研究の実用化を肌で感じられることは、研究者冥利に尽きますよね

一方で、アカデミアにおける基礎研究は未知のものに対する絶え間ない探求を続けることであり、研究のエンドポイントは定まりにくい傾向があります。

あかのん

アカデミアの研究は長期化する傾向にあります

研究のこの側面を受け入れられずに、研究から離脱する人が一定数みられます。

これは性格的な向き不向きであるので、勉学的に優秀な人材であろうと関係ありません。

メリット⑤:チーム研究による孤独感の軽減

企業研究者の場合、ある目的に対してチームで研究を進めます。

このチーム研究のスタイルには向き不向きもありますが、精神的に安定感を得られる人もいます。

アカデミアでは、研究内容、仲間作り、研究室の立ち上げ、資金調達、啓蒙活動など、全てにおいて個人の力が大きいです。

あかのん

うまくいかないときには孤独感、無力感、劣等感など…ネガティブ思考になりやすいです。

自らガツガツと進めていくタイプでない方は企業研究者の方が向いているかもしれません。

メリット⑥:プライベート時間が作りやすい

企業研究者はプライベート時間を確保しやすいというメリットもあります。

民間企業では、労働基準法があり、会社としての世間の評価があり、残業時間などは厳しくチェックされます。

しかし、アカデミアで働く研究者は、より多くの時間を研究や論文執筆に費やすほど業績に直結するという観点から、プライベートを削り、寝る時間を削り、、、と無理をしがちです。

博士卒が企業研究者を選ぶデメリット

デメリット
  • 経済的安定が得研究の優先事項が商品化や特許になる
  • 研究内容は企業の方針に従う
  • 研究職から別の部署に異動になる場合がある

デメリット①:研究の優先事項が商品化や特許になる

企業研究者になるデメリット④論文より商品化や特許が優先になる

アカデミアでの研究は「基礎研究」がメインです。

一方、企業の研究職では、研究より開発に重きが置かれ、基礎研究で得られた新規発見を商品やサービス化するための「開発」がメインになることが多いです。

優先順位は、商品・サービス化 > 特許 > 論文

長期戦を見据えてじっくり取り組む基礎研究とは反対に、短期間で成果を挙げていくスタイルになります。

メリット③「研究のエンドポイントが定まりやすい」の裏返しでもあります。

じっくりと基礎研究に従事したい方には向かないかもしれません。

(もちろん、大きな企業研究施設であれば、基礎研究に取り組んでいる場合もあります)

デメリット②:研究内容は企業の方針に従う

企業研究者になるデメリット②研究内容は企業の方針に従う

企業の研究職は、どの部に配属になるか分かりませんし、研究内容も上長の許可のもと行うことになります。

その研究にあなたがやりがいを感じるかはわかりません。

製薬業界に就職が決まったとある友人は、興味のある分野とは全く別の部署に配属され、かなり残念がっていました。

ただ、能力が評価されてチームのブレインとして成長するにつれて、状況は変わります。

30~40代になってくると、実力次第では自分の研究を実現することもできます。

デメリット③:研究職から別の部署に異動になる場合がある

企業研究者になるデメリット③他部署に異動になる場合がある
あかのん

研究部門で採用されたのに、別の部署に移動になることもあるの?

こちらは深刻なデメリットです。

また友人の話ですが、研究部門で就職した博士卒が、数年後に営業職に異動になりました。

企業にとって研究部門とは「先行投資」ですから、経営が悪化すれば縮小されやすくなります。

その際に研究職が他部門に異動になるケースはないとはいえません。

まとめ

博士が民間企業に就職するメリットとデメリットをまとめました。

博士課程のあとの進路は誰もが悩む道です。

どちらの選択肢も残しながら、自分の向き不向きを考えれると良いですね。

あかのん

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